電力の流れは、「発電」→「送電」→「変電」→「配電」→「使用」 と一方通行の
流れで、しかも日本では、この流れを集約して管理
しています。電力会社です。
はじめはインターネットと同じように、小さな電力網で、発電から配電まで行わ
れていたのですが、需要の増加とともに、小さな
電力網の結合ではなく、一つの電力網を巨大化させていったのです。
巨大化された理由は、「規模の経済」のためです。
大きな発電所で大量の電気を作ったほうが、発電所の建設や管理、送電のコスト
を小さくすることができ、安価に電力を作ることが
できたのです。
発電効率も高めることができました。
ところが現在では、この巨大な電力網が「馬鹿」になっているといいます。
いくつかその理由があります。
1)安定供給の確保が設備の巨大化を招いている
2)送電ロス
3)廃熱を再利用できない(効率の頭打ち)
4)災害リスクが高い
5)柔軟性が無い
6)再生可能エネルギー普及の妨げ
7)管理コストや建設コストの増大
1)安定供給の確保が設備の巨大化を招いている
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巨大な電力網には、安定供給が至上命題として立ちふさがっています。
電力需要(電力の使用)には波があります。
特に夏場の昼間には需要がピークとなりますので、電力会社はこのピークにあわ
せて、発電設備を建設し、運用しなければいけません。
普段は眠らせて、ピークのために動かす必要があるのですから、設備を過剰に持
つ必要があり、そのために効率が悪くなります。
電力会社はピーク電力を下げるために、深夜電力を有効活用するように誘導して
いるのは、このためです。
2)送電ロス
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発電所は消費地に近いほうが送電ロスが少なく済みます。
ところが、巨大な発電所を作ると、遠隔地にまで送電が必要になります。
したがってどうしても送電ロスが発生してしまいます。
この送電ロスを減らすために、高圧にして送電する方式がとられていますが、高
圧送電線は景観破壊、森林破壊、そして健康面での問題も指摘されています。
3)廃熱を再利用できない(効率の頭打ち)
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日本の発電効率は世界最高ですが、それでも40%です。
貴重な化石燃料から100のエネルギーを得ても、そのうち40しか電力に変換
できず、残りの60は熱となってしまいます。
発電所が消費地のすぐそばにあるのであれば、この廃熱をお湯や熱そのものとし
て利用することができますが、巨大発電所は消費地から遠いため、再利用ができて
いません。
ちなみに最近よく耳にするガスの家庭用燃料電池は、家庭にガス管で送られる
LNGを元に発電します。
この発電効率も40%程度です。
ただし、発電で発生した廃熱がすぐそばにある住宅で活用できますので、効率は
80%−90%にまで高められます。
4)災害リスクが高い
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2007年の中越沖地震で運転が停止された柏崎刈羽原発はいまだに運転再開さ
れていません。
地震だけではなく、故障やテロなどのリスクは常にあります。
巨大発電所への依存が高いと、それだけ災害リスクが高まります。
このリスクを減らすためには、巨大発電所を予備で作るしかなく、それは多額の
建設コストや管理コストがかかってしまいます。
5)柔軟性が無い
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巨大な発電力になると、わずかな割合の変動に対応ができません。
1000万kWに対して、1%でも10万kWにもなります。
需要はもっと決め細やかに変動しますが、こういう細かな変動に合わせて発電容
量を増減させることができませんので、発電効率を下げています。
6)再生可能エネルギー普及の妨げ
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風力発電で起こした電力を系統電力に接続することに対して、「不安定な変動を
コントロールできない」と電力会社が拒否していましたが、風力発電の発電容量は
1000kW。
一方電力網の発電出力は例えば東北電力の場合、1600万kW。
ほんの微々たる容量の変動に対して、対応できないのです。
7)管理コストや建設コストの増大
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巨大な発電設備の建設や管理には、高度な技術、高いマネジメント力、専門性が
求められます。
品質を高めるよう電力会社は努力を続けていますが、その分だけ発電所の建設や
運用に多大なコストがかかってきます。
柏崎刈羽原発では、地震災害後度重なる事故が発生し、運転再開が延期を重ねて
いることで、電力会社が多くの痛手をこうむっているのは、ご存知のとおりです。
集約型の電力供給はあるサイズまでは、効率も向上し、コストも抑えられるので
しょうが、適正サイズを超えると、効率もコストも逆効果になりかねません。
日本の電力網は、限界を迎えているように思えます。
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